家系図・家系譜は、親子のつながりを連続的に図式化したものです。懐かしい父母・祖父母・・・と、先祖をさかのぼり記録した家系図・家系譜は、まさに「我が家の歴史」そのもので、「私」にとってはかけがえのない宝物となります。
単に記録するだけではなく、歴史年表などで歴史上の出来事と照らし合わせて見て下さい。家系図作成のプロセスを通して、新たな自分を発見するに違いありません。
家系図、家系譜は構図の違いから、縦系図と横系図に大別され、それぞれに長所と短所があります。
どちらも、右から左、または上から下へと、時の流れに沿って書き進められます。
「家系図」は単に名前を系線でつないだ縦系図のことを、「家系譜」は個人の履歴を記した横系図のことを差すことが多いのですが、厳密な区別はなく、単なる呼称の違いといえるでしょう。
このサイトでは便宜上、縦系図を家系図、横系図を家系譜として説明します。
系図を上下左右に展開し、親子兄弟の関係をわかりやすく図式化したものです。本人を中心に、父方と母方の両家を、一枚にまとめて書き込むこともあります。
親戚が大勢集まる法事など、先祖供養の祈願としての利用に向きます。
<長所>
系図の全体が一目瞭然で、誰が見てもわかりやすいのが特徴です。きれいに清書した図紙を、掛け軸や額に表装すれば、美しく仕上げることができます。掛け軸は巻いて軸箱に納めれば保管もし易く、費用も横系図に比べて安くなります。
<短所>
図紙の大きさが決まっており、書き込める内容に限界があります。また、仕上げた後、家族構成に変化が生じると、加筆するスペースが確保できず作り直しになることがあります。長期保存を目的にするより、掛けて用いる実用品として考えたほうがいいでしょう。
<家系図のレイアウトについて>
家系図は「図」である以上、ただ単に線でつなげればいいのではなく、見やすく作ることが重要です。
縦系図作成のポイントは、はじめに図紙の大きさを定めますが、図紙の大きさには規格があります。系図に書き込む人数や文字数を考慮に入れ、その大きさを判断しますが、ある程度の経験が必要です。図紙の大きさが決まれば、それに合わせて配置していきます。
縦系図はレイアウトの良し悪しで、系図の見やすさ、見た目の美しさが決まってしまいます。家系図はわかりやすくシンプルに構成するとが大事ですが、そのように構成された家系図は自然と美しくまとまり、表具して掲示する場合は、美術品に近い趣があります。
上の作例は、比較的兄弟の人数が多い家系図ですが、このようなレイアウトはよく見かけます。左右どちらもよく似ていますが、違いは直系線の引き方にあります。
左図は中心揃えを意識した配置で、バランスも悪くありません。家系図としては、一般によく見かけるパターンで、きれいに整えられていると思います。しかし、直系線が左右に振れているので、視線移動に若干のもたつきを感じます。
右図は、その欠陥を補うため直系線を真っすぐ揃えています。直系が明確になり、筋の通った印象になります。上下に真っすぐに視線が落ちるため、家系図を一瞬で見終えてしまいます。
このように系線の引き方で家系図の印象はかなり違ったものとなります。
特に人数の多い系図では、代ごとに直系線が移動すると、視線移動が大きくなり乱雑に見えるようになります。
ただし、系図のバランスは系線位置だけで決まるものではありません。系図全体を見ながら、最適なレイアウトを見つけましょう。
横系図は、巻物に代表され、伝統的な家系譜のスタイルです。系図を右から左に書き綴る形式で、横へ横へと書き進み、その長さは長いものでは10メートル以上になります。
<長所>
横に長い書式は、スペースに余裕があり、故人の事跡を記したり、新たに誕生した子や孫を加筆できます。数代後までの追記しながら利用可能で、一幅の系譜を長期にわたり利用できる点では経済的です。長期保存に適するため、家系の記録・保管用として、後世に伝える目的でご利用ください。特に由緒があり系図が長い旧家には、巻物ではなく系本をおすすめします。
<短所>
横長の構図なので、縦系図のように家系の全体を一度に見ることが難しく、系譜をたどりながら見ることになります。系譜全体を把握するためには、縦系図を併用した方がいい場合もあります。
<家系譜の代表的な様式>
巻物…家系譜の定番ともいえるのが巻物です。
巻物長は約8mで、10代程度の系譜を書き込むことができます。巻き込むので長期保存に向きますが、系譜を見るたびに解いたり巻いたりするのが、少々面倒です。
系本…表裏合わせて18mの長さがあり、長い系譜でも一冊で記録できます。また、系譜の途中から、本のように開くことができ、巻物のように解いたり巻いたりする手間がいりません。
<家系譜のレイアウトについて>
横系図の原稿は、毛筆で書き込むスペースを確保する点は縦系図とかわりませんが、定められた規則にしたがって書き綴るだけで、レイアウトに関する配慮はそれほど必要なく、手間を惜しまなければ比較的簡単に作ることができます。
例えば、Wordのようなワープロソフトでも作ることはできます。DIY派の方は挑戦してみてください。
しかし、系譜全体の長さには注意する必要があります。巻物は最低でも後ろに1メートルほど余白を残しておかなければ加筆することができなくなります。文字数が多い場合は余白をつめるなどして、系譜全体が縮まるように調整しましょう。
上記は、毛筆で清書可能なスペースを確保しながら原稿を起こした作例です。
系線は、上下左右の線が段違いにならないよう揃えます。
名前(諱・字)・生年月日・本籍地・出来事・歿年月日・行年・戒名と、その人の生から歿へ向かって順に書き込みます。
プロの書家は、紙面を汚さないように、系譜の末尾から先頭に向かって書き進みます。そのようなことは、完璧な原稿があってこそ可能になるのです。